さくら🌸の季節に
さくら🌸の季節に
Spring Essay / 春のある日
川沿いに揺れる桜。あの日の空気が、まだここにある。
久しぶりに、あの場所へ来た。
会社をやめたころ、毎日のように足を運んでいたあの場所。
モノレールの走る音が、遠く川面の向こうから響いてくる。
30年間の思いが、体の重さと、虚無と、焦りと——
「これからどこへ行けばいいのか」という問いと一緒に、
胸の中でぐるぐると渦を巻いていた。
「これからどこへ行けばいいのか」という問いと一緒に、
胸の中でぐるぐると渦を巻いていた。
もう、あそこへ行かなくていいんだ。
自分は、必要とされていないんだ。
そのふたつの言葉が、交互に頭の中をノックし続けていた。
そんなモヤモヤとした気持ちをよそに、桜はただ——美しく、無邪気に、ほころんでいた。
まわりには家族連れ、カップルたち。笑い声が、春の風に乗って流れてくる。
私がどんな状態であっても、季節は巡るのだ。
そよ風を浴びたとき、なんだか、すこし、落ち着いた。
川を泳ぐ魚。食べ物を探す鳩。地面をゆく蟻の行列。散歩する犬。
ずっと見えていなかった景色が、ふいに目に飛び込んでくる。
それだけで、胸の奥がほぐれていった。
こんな私でも、受け入れてもらえる気がした——そんな場所だった。
とりあえず、自分を必要としてくれるところから、やり直そう。小さな一歩で、いい。
スーパーの扉を叩いた。
あれから、さくらの季節が巡った。
いま、私は——元気に過ごせている。
あの川沿いの風も、あの日の静けさも、今でもちゃんと、自分の中に息づいている。
さあ、なにをしようかな。🌸
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